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【準々決勝レポート/トヨタ自動車 vs. 富士通】この不思議が行き着く先

2021年12月17日

 もはや敗れた試合を表現するのに常套句のようになってきた「負けに不思議の負けなし」――「第88回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会(以下、皇后杯) ファイナルラウンド」の2日目、準々決勝で敗れたトヨタ自動車アンテロープスも、まさに不思議ではない負け方をしたようだ。

 前回大会のファイナリストで、Wリーグの2020-2021シーズンのチャンピオンでもあるトヨタ自動車が富士通レッドウェーブに55-62で敗れた。トヨタ自動車にとっては6大会ぶりにベスト4を逃す結果となった。

 #2長岡萌映子は「後半、ゴール下でのシュートミスが多く、ターンオーバーも多かったです。ディフェンスでもやられたくないところでやられるなど、自分たちが徹底しなければいけないところも疎かになってしまいました。そこが相手に流れを持っていかれたところです」と振り返る。少し遅れて記者会見場に来た#0馬瓜エブリンも「トヨタ自動車のよくないところがすべて出たゲームでした」と短くまとめるに止めたが、いずれにせよ、彼女たち自身から見ても、なぜ負けたのかまったくわからない、というゲームではなかったようである。

 手応えがなかったわけではない。第1クォーターは15-5という幸先のよいスタートを切っているし、トヨタ自動車のルーカス・モンデーロヘッドコーチもこの試合で掲げていた2つの目的は達成できたと言っている。ひとつは富士通を60点以内に抑えること。わずかに超えてはいるが、ヘッドコーチとしては及第点らしい。もうひとつは、今シーズンのWリーグで1試合平均約11本も決めている富士通の3ポイントシュートを抑えること。これは6本に抑えている。長岡の、選手としての感覚とはやや異なるが、少なくともヘッドコーチは「ゲームプランどおりのディフェンスがうまくできた」と言っている。

 一方で、富士通のBTテーブスヘッドコーチも自チームのディフェンスを「ゲームプランどおりだった」と言っている。つまり両チームともにディフェンスは思い描いていたものを出せたというわけである。

 それらを勘案すると、勝敗を分けたのは2ポイントシュートということになる。高さで上回り、それを生かしてペイントエリア内を強調して攻めたトヨタ自動車に対して、富士通はときにゾーンディフェンスを敷きながら、ペイントエリア内を強調して守り抜いた。富士通の3ポイントシュートを抑えることを強調し、それは一定の成功を見せながら、一方で2ポイントシュートを約47%の確率で決められたトヨタ自動車。富士通の47%は、他の試合と比べてもけっして飛び抜けて高い数字というわけではないが、それ以上にトヨタ自動車は自分たちのそれを確率よく決めきれなかった(約33%)。

 長岡はそれを「ゴール下までパスは入っていたし、オフェンスリバウンドも取れていました。ただ、(ディフェンスの)圧なのか、(勝つことへの)プレッシャーなのか、弱さなのか、いつもなら入るシュートが入りませんでした。流れが悪かったのかもしれませんが、1本でも決めていればリズムにも乗れていたのですが……」と言っている。

 得点をあげる確率が一番高いとされているゴール下のシュートを何本も落としたのだから、負けても不思議ではない。しかしなぜそのシュートが落ちてしまったのかを考えると、そこはわからない。不思議である。不思議ではない負けを作った原因は不思議。そんな不思議があるから、バスケットボールという競技はおもしろいのかもしれない。

 そんな奇妙な負け方をしてしまったトヨタ自動車だが、思い返せば彼女たちは昨シーズンも皇后杯の悔しさをWリーグで晴らしている。皇后杯の負けから学び、それを歴史の転換点に昇華させているのだ。馬瓜は言う。
「今日のゲームではみんなが同じ方向を向いていなかったと思います。環境も変わりましたが、準備する時間は十分にあったので、今日の負けから自分たちの目指すものを明確にして、リーグ優勝に向かって頑張りたいです」
 不思議と落ちたゴール下のシュートを見直して、不思議ではない負け方をしたトヨタ自動車がどうカムバックしてくるか。そうした細やかな研磨と鍛錬が日本の女子バスケットボールをさらに強くするのだろう。

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